ソーシャルレンディングで投資を行う際、また実際に投資を行い収入を得ている場合に気になるのが、分配金など投資利益に対する税金です。
- 税金はいくらか?税率は何%(パーセント)か?
- 税金はいつ納税するか?厳選徴収はあるか?
- 確定申告は必要か?不要になる場合はあるか?
- 税金の種類は?株式・投資信託など他の商品と損益通算できるか?
など、様々な疑問があると思います。
そこで、本記事では、これらの疑問に答えるために、ソーシャルレンディングの税金関係について解説して行きます。税金は重要なことなので、ソーシャルレンディングで投資を始める前に、または投資を始めたらチェックしておきましょう。
ソーシャルレンディングの基礎から理解しておきたい方は、以下の記事をご参考ください。初心者の方向けに仕組みや特徴を解説しています。
ソーシャルレンディングの税金の特徴・仕組み【基礎】
はじめに、ソーシャルレンディングの税金の仕組み(所得の種類など)について解説して行きます。税金の支払い金額や時期、確定申告で重要になる重要なポイントとなるので、しっかり理解しておきましょう。
所得とは、収入から必要経費と各種控除を差し引いたもので、以下のような数式で表されます。
分配金は雑所得
まず重要なポイントが、ソーシャルレンディングの金利収入(分配金)の所得の区分・種類です。所得区分によって、税金(納税額)の計算方法が変わってきます。
ソーシャルレンディングの金利収入(分配金)の所得は「雑所得」に区分されます。所得区分には、下記の10の区分がありますが、雑所得は、他の9種に当てはまならない所得です。
[box05 title=”所得区分”]
- 利子所得:預貯金の利子など
- 配当所得:株式の配当金など
- 不動産所得:不動産など
- 事業所得:工業や農業、自営業などの事業
- 給与所得:給与・賞与など
- 山林所得:山林を伐採して売るなど
- 退職所得:退職によって受け取る所得
- 譲渡所得:事業用の固定資産の売却益など
- 一時所得:満期保険金など
- 雑所得:他の9つの所得に当てはまらないもの
[/box05]
ちなみに、株式の配当金は「配当所得」、株式の売却益は「譲渡所得」となりますが、ソーシャルレンディングの分配金は「雑所得」に分類されます。
[box04 title=”ここまでのポイント”]
- 所得の種類によって納税金額の計算方法が変わる
- ソーシャルレンディングの分配金の所得は「雑所得」
[/box04]
税金・納税額の計算方法
ソーシャルレンディングの分配金は「雑所得」であるため、給与所得などと合算して所得税が計算(総合課税)できます。
例えば、年収600万円(月収50万円)の人が、ソーシャルレンディングで30万円の分配金を一年間に得た場合、合計した630万円(年収:600万円+分配金:30万円)に対して税率が掛けられ税金が決まります。
掛けられる税率は、課税される所得に対して下表のように決まっており、今回の例の課税所得630万円の場合、税率は23%になります。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円〜330万円 | 10% | 97,500円 |
330万円〜695万円 | 20% | 427,500円 |
695万円〜900万円 | 23% | 636,000円 |
900万円〜1,800万円 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円〜4,000万円 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
引用元:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
また、各課税所得毎に控除金額が決まっており、年間の課税所得630万円の場合、636,000円が控除されます。つまり、税金は「630万円×23%ー63.6万円=81.3万円」となります。
厳密に言うと、年収と給与所得は違いますが、今回は計算の概要ということで、年収=給与所得としました。また、経費や控除なども省略しています。
[box04 title=”税金の計算方法のまとめ”]
- 雑所得は給与所得などと合計して所得税が計算可能
- 税率や控除額は、課税される所得によって決まる。
年収600万円で分配金が年間30万円の場合:
【所得税】81.3万円(=課税所得×税率ー控除)
*課税所得:630万円
*税率:23%
*控除:63.6万円
*年収=給与所得として計算。その他の経費や控除は省略。
[/box04]
税金の支払い方法・源泉徴収
所得税の計算方法がわかった所で、この所得税をどのタイミングで納税すれば良いか?税金の支払い時期・方法について詳しく解説して行きます。
結論から述べると、ソーシャルレンディングから分配金が振り込まれる時点で、分配金に対して20.42%(復興特別所得税含む)が所得税として源泉徴収されます。
例えば、分配金として5万円が発生する場合、1万円分が源泉徴収として引かれ、4万円だけが口座に振り込まれます(所得税を20%として計算。実際は復興特別所得税を含む20.42%)。
「あれ!?ソーシャルレンディングの分配金に対する所得税は給料などと合算して徴収するんじゃなかった?」と疑問に終われる方は、本ページのここまでの内容をしっかり理解されている証拠です!
実は、源泉徴収と実際の課税額に違いがある場合、確定申告が必要になります。
税金を払い過ぎている場合は、確定申告することで還付金が受け取れます。また、源泉徴収から不足している場合は、確定申告をして足りない分を払うことになります。
[box04 title=”納税時期・方法のポイント”]
- 利益(分配金)に対して約20%が源泉徴収される
- 多く払い過ぎた分は確定申告で還付
- 不足分は確定申告で払う
⇒確定申告が不要になる場合も!
[/box04]
ソーシャルレンディングの確定申告|必要経費は?
次に、ソシャレンの分配金に対する所得税の確定申告について解説して行きます。
確定申告は必要?確定申告した方がお得なケースは?
確定申告は、「税金の支払い方法・源泉徴収」の所で解説したように、源泉徴収と実際の納税金額の違いを埋めるために行います。
源泉徴収で払い過ぎている場合は還付金がもらえるので、確定申告を行うのが無難です。ちなみに、還付金として払い過ぎた分が戻ってくるのは「課税される所得金額が330万円以下」の方になります。
課税される所得金額が330万円以上の方は、確定申告により不足分を支払うことになります。
確定申告が不要になる条件は?
ただし、確定申告が原則的に不要になるケースがあります。それは、会社員で年収2,000万円未満、かつソーシャルレンディングの分配金を含めた雑所得が、年間20万円以下の場合です。
[box04 title=”確定申告・まとめ”]
- 源泉徴収のズレを補うために確定申告を行う
- 分配金を含めた雑所得が、年間20万円以下の会社員(年収2,000万円以下)は、原則確定申告不要
- 還付金が出る場合は、確定申告した方がおトク!
[/box04]
これ以外にも、年収が低く、基礎控除や社会保険料控除・生命保険控除を利用することで、所得が0円以下になる方も確定申告が不要なります。ただし、原則的に、個人で所得税を申告することが必要なので、確定申告を行うのが無難です。
ちなみに、生命保険控除を適用する場合は、生命保険料控除証明書が必要になります。
必要経費の計上【上級者向け】
上述のように、ソーシャルレンディングは雑所得に分類されるため、必要経費の計上を行うことで、源泉徴収された金額が還付される可能性があります。
なるべく経費を計上して、還付金を受け取りたい所ですが、必要経費として認められるものとそうでないものがあります。必要経費以外を計上してしますと、後々、延滞税などを請求されるので注意しましょう。
必要経費の代表例としては、投資口座の「入出金手数料」や「書籍代・セミナー費用」などがあります。
投資をする上で必要なパソコンを使うため「電気代」や「インターネット代」も入らないの?と疑問もあるかもしれませんが、生活費との割合で按分が必要です。ただし、この按分比が曖昧なので、必要経費として計上しないのが無難と考えています。
住民税の納税は?
ここまで解説してきたように、ソーシャルレンディングの分配金に対する所得税は、源泉徴収により約20%自動的に納税されていますが、住民税の源泉徴収は行われません。そのため、住民税には申告義務があります。
住民税の金額(所得割)は、一般的に「収入(分配金)×10%(県税4%+市民税6%)」程度となっています。
住民税(金額)=「均等割」+「所得割」
住民税は、所得割と均等割の合算で決定します。均等割は、収入・所得に関係なく全員が一律で負担する金額です。また、所得割とは、所得や収入に応じて負担額が決まるものです。
住民税に関しては、お住いの市町村によって違うので、申告方法や住民税の申告が不要となるケースなどに関する疑問・質問は、市町村に問い合わせをしましょう。
[box04 title=”住民税のまとめ”]
- 住民税は源泉徴収されていないので申告義務がある
- 住民税の金額は収入の10%程度
- 申告方法などの質問はお住まいの市町村へ
[/box04]
ソーシャルレンディング税金・確定申告【まとめ】
ここまで解説してきたことをまとめると、ソーシャルレンディングの分配金の所得は「雑所得」になります。
雑所得は、給与所得などと合計して所得税が計算可能ですが、分配金として受け取る時点で約20%分が源泉徴収されます。そのため、実際の計算した課税額よりも源泉徴収の額が低い方は確定申告することで、還付金を受け取ることができます。
また、源泉徴収の金額が、計算した課税額が少ない方は、確定申告することで足りない分を払うことになります。ただし、分配金を含めた雑所得が20万円以下の会社員(年収2,000万円以下)の方は、原則的に確定申告が不要になります。
[box05 title=”税金・確定申告【まとめ】”]
- ソーシャルレンディングの分配金の所得は「雑所得」
- 雑所得は給与所得などと合計して所得税が計算可能
- 分配金に対して源泉徴収される(約20%)
- 分配金を含めた雑所得が20万円以下の会社員(年収2,000万円以下)は、原則的に確定申告不要
- 源泉徴収で多く課税されている場合、確定申告すれば還付金がもらえる。
[/box05]
また、日本では収入を得た場合、個人で所得税を確定申告する義務があるので、ソーシャルレンディングでの投資を機会に、確定申告する癖をつけておくと、今後、確定申告が必要になった場合、焦らずに対応できます。
よくある質問|Q&A
最後に、ソーシャルレンディングの税金に関して、よくある質問とその答えを何点かピックアップして行きます。
個人事業主は確定申告が必要ですか?
個人事業主やフリーランスの方は、年明け〜年末にかけて確定申告を行うと思いますので、その際に雑所得として、ソーシャルレンディングの収入・利益を申告しましょう。
専業主婦やパートの場合、確定申告必要ですか?
個人事業主の場合、必ず申告が必要でしたが、専業主婦の方・パートの方はケースバイケースになります。
まず、専業主婦の方の場合、夫の扶養に入ってる場合でも、基礎控除により「38万円」までは、確定申告の必要はありません。38万円以上の収入・利益が出た場合に、基礎控除から引いた分が課税対象となります。
また、パートの方は、基礎控除の他に、給与所得控除の65万円が利用できるようになります。
[box05 title=”主婦の方の確定申告”]
- ソシャレンの利益・収入を含めた合計所得が38万円以下
⇒ 基礎控除38万円で所得が0となるため、原則確定申告不要 - 主婦の方も確定申告すれば、源泉徴収分が還付される
[/box05]
分離課税と総合課税の意味違いは?
ソーシャルレンディングの収入は、給与所得などと合算して所得税が計算できる「総合課税」となりますが、株式投資の利益額や投資信託などの利益金額は分離課税となります。
分離課税とは、名前に分離とあるように、それぞれの所得の種類に応じて課税方式で、「申告分離課税」と「源泉分離課税」の2種類があります。
申告分離課税
投資家にとっては、株式の売却益(譲渡益)やFXの収入などが、申告分離課税の代表例となります。
- 株式投資の利益
- 投資信託の利益
- FXの利益
源泉分離課税とは、投資信託や株式の配当金、譲渡益などが、証券会社の口座に入金される際に、税金が自動で徴収され、申告が必要ない課税方式のことです。
証券会社の口座設定で「特定口座(源泉徴収あり)」を選択することで、源泉分離課税で取引することができます。
ソーシャルレンディングの税金は高い?
所得税は、個人の収入に応じて課税額・税率が変わる「累進課税」となっていますが、ソーシャルレンディングは、個人の収入・所得に関係なく、一律20%程度源泉徴収されます。
確定申告により、所得税率が低くなる方は、源泉徴収よりも安くなりますが、税率が20%以上に設定されている納税者の場合、源泉徴収よりも納税額が高くなります。
総合課税は繰越控除できますか?
総合課税方式の場合、繰越控除は行えません。
繰越控除とは、その年の損失・赤字分を次年度に繰り越し、次年度の所得計算に適用できる制度です。株式の損失などは、確定申告することで、3年間損失を繰り越せませすが、総合課税の場合、繰越控除ができません。
確定申告の入力は難しいですか?
ソシャレンに関する確定申告の入力ですが、ソシャレン事業者から送付される「支払調書」を見て入力すれば問題なく確定申告が行えます。
e-tax(イータックス)を利用して、確定申告を行う場合、氏名などの入力の後、収入・所得の入力画面が表示されるので、給与所得の部分で源泉徴収や支払調書を見ながら入力できます。
また、株式や投資信託でも利益や収入がある方は、年間取引報告書などを参考に入力しましょう。
節税をする方法は?
節税の方法としては、上述の「経費の計上」の他、法人口座の開設やふるさと納税の利用などがあります。
[box05 title=”節税の例”]
- 経費の計上
- ふるさと納税
- 法人口座の利用
[/box05]
ふるさと納税は、ソシャレン投資だけでなく、全ての給与所得者に共通の節税方法となります。ふるさと納税での寄付合計金額-2,000円程度の節税効果があり、返礼品による還元も人気の理由となっています。
節税の注意点は?
節税は合法的な範囲で行いましょう。その上で、他の金融商品との損益通算が不可能な点や総合課税方式の場合、「繰越控除」ができない点を頭に入れて、節税対策を行いましょう。
事業者毎に源泉徴収の支払いタイミングに違いはありますか?
基本的に、全ての事業者で、源泉徴収による納税タイミングは同じです。分配金が口座に入金される時になります。
ただし、事業者によっては、分配金の延滞や返済遅延が発生している事業者もあるため、そういった事業者の使用は避けるべきです。
本サイトでのソシャレン事業者の比較や選び方、最新ランキングは、以下の記事をご参考下さい。